2012-10-30

Each Other / Heavily Spaced

Each Otherはモントリオールのトリオ。2011年10月のEP「Taking Trips」に始まり、今年に入ってからは7"「Traces to Nowhere b/w Sit Still 7"」やカセットのコンピレーション「Khyber Comp Volume II」での新曲提供、と続々と作品をリリースしてきている。
そして今年10月に新作EP「Heavily Spaced」を発表。現在の時点では彼らのbandcampで試聴、デジタル音源が購入出来る。
このEPでは一音一音の存在感が際立ち、残響はより遠く方まで行き渡っていて心地よい。横にも縦にもスケール感がさらに広がっているのでは。以前からの特徴でもある1曲の中で繰り広げられる変則的な曲調もややゆるやかになって健在。 
#3 "Bad Neighbours"は静かに揺らぎながら変化する様がとてもメロウな雰囲気でそれと対称的な出だしの#4 "Good Neighbourhood"はトーンが一層明るく、#5 "A Strong Spinning"でのうっとりするほど美しいメロディは特に圧倒的。多様な音楽性を土台に持ちながらもどれか1つの印象に偏らずにまた別の個性に昇華させているのも、優れた柔軟性があってこそかもしれない。自らのバンド名にも表れているかの様な息の合ったヴォーカルのハーモニー、時にうねりを伴い様々な表情を見せる2本のギターの掛け合いはドリーミーながらも閉鎖的な雰囲気では無く、むしろ風通しが良くしっかりと前を見据えた強さがあるように思う。そして音の隙間に絶妙にフィットしているユニークかつパワフルなドラムがより一層サウンドを色濃く魅力溢れるものにしている。聴いていて思わずほころんでしまうような素敵な6曲。
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bandcamp : Digital[released] October 25, 2012
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2012-10-29

Alfred Beach Sandal / Night Bazaar

2009年頃から活動しているAlfred Beach SandalMOXA DELTAのVo/Gの北里彰久のソロプロジェクトでメンバーは割とイレギュラーな模様。これまでにセルフタイトルのCDRを自主制作と鳥獣虫魚から、2011年には1stアルバム「One Day Calypso」を同じく鳥獣虫魚からリリースしている。
新作EPの「Night Bazaar」は元々今年の夏カセットでセルフリリースされもの。ライヴ会場で購入できましたが、今度11月14日に限定1000枚でNEWTOKからリリースされる。ちなみにCDはカセットとアートワークが異なり、ボーナストラックが2曲追加。
タイトでトロピカルとも言えるリズムにサックスの音色が豊かな雰囲気のタイトル曲#2 "Night Bazaar" 、ポップなのにどこかシュールな印象の#3 "Summer Sale"、グルーヴィでメロディも美しい#5 "Sweety Sweety"と続き、弾き語りの様にひっそりと歌う#5 "家のない町" と多国籍で一度聴いたら忘れられない印象的な魅力。先日バンド編成でのライヴを観て来たのですが、その演奏は場の空気をエキゾチックに変えた様に思えた。新曲メインの内容(だったと思う)でしたが楽曲のファンキーさ然り、すっと心に入ってくる歌声然り、まぶしい程にキラキラしていた。帰ってきちんと歌詞を読んでみるとほんのりドリーミィ、でも甘過ぎないセンスが炸裂していて納得。季節的にはもう寒くなり始めた秋ですが一瞬夏に戻った気分になれる素敵な曲のオンパレード
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* Self-release : Cassette[released] August 24, 2012
* iTunes : Digital[released] September 26, 2012 
NEWTOK : CD [release] November 14, 2012
上の写真はCDバージョンとは異なるカセットとiTunesのアートワーク。

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#3 "Summer Sale"のビデオがさり気なくパンチ効いてる
 

2012-10-28

Peace / The World Is Too Much With Us

カナダのバンクーバーの4人組、Peace(※同名バンドが複数いるので注意)のSuicide Squeezeから10月にリリースされた2ndフルアルバム「The World Is Too Much With Us」
は2011年のアルバム「My Face」以来の新作。
前作同様ポストパンクの要素がありつつそれと並行して今回はサイケな雰囲気がやや強化されている様に思った。リリース前に公開されていた#1"Your Hand In Mine"は伸びやかなメロディの良さがキラリと光る。なのでこれはてっきりポップ路線に変更したかと思いきや#2" Fun and Games"や #3 "The Perp Walk"などではキレのある曲が続く。時に言い放つ様に(いい意味で脱力感を含んだ)時にメロディックに歌うヴォーカル、うねりが格段に増して際立つギター、メロディ寄りで豊かなベースライン曲にぐっとパワフルさを加えるドラム。そういった個々の良さが合わさっ時のインパクトがかなり大きい。どこかポップな部分と勢いを保ち、さらに堂々とした安定感さえ漂い出しています。
そして後半の#6 "Winterhouse"から流れがゆるやかに変化して来る。曲の尺も長めになり、力強く突き進みながらじわじわと曲がヒートアップしていく様が良い。要素としては前からすでに持っていたのかもしれないが今までは違った一面が。特にラストの#8 "Tattoo"はスケール感もさらに広がってアルバムでも一番深い地点三段階ぐらいに良さじわじわ来る大充実
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Suicide Squeeze : LP/Digital[released] October 16, 2012
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 メンバー出演な"Your Hand In Mine"のビデオ追記!:2012 11/14)

2012-10-24

METZ / METZ

カナダ国内だけに留まらず注目を集めている、トロントのトリオMETZのデビューフルアルバム。Sub Pop Recordsと契約してからのリリース。始まりから終わりまで途切れる事のないノイズパンク/グランジな音が炸裂しまくっている。休憩する暇など全く無く、聴いていてただ息を飲み続けてしまう。90年代オルタナティヴ好きを始め、近年のリバイバル世代など意外と様々な趣向の人にヒットしそう。これだけ硬質でストイックな事をやっていてもどこか入りやすいというかすんなり聴き込めるのがやはり今のバンドらしい部分なのかなと思った。そして視界まで歪みそうなハードコアさはあっても音の雰囲気だけに関して言えば、あまり暗い感じは見られないのも特長。その両方のバランスが良い。
ちなみにセルフタイトルのこのアルバムはプロデューサーはHoly FuckのGraham WalshとCrystal Castlesのプロデューサー、Alex Bonenfantという心強さっぷり。(やはりそこもトロントつながり。)
ニューバンドとして取り上げられる事が多そうですが、結成は2008年。メンバーの年齢層も決して低くなさそう所が、 今までじわじわと力を付けて来た感じが伺えます。ある種ストレートとも言えるのは色々磨いていった結果なのではとも思った。このアルバムを聴く限りライヴも凄いのだろうなと想像が付くのでぜひ観たい。日本盤はTrafficからリリースされています。
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Sub Pop Records : CD/LP/mp3[released] October 9, 2012
Traffic(日本盤) : CD[released] October 10, 2012

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#7 "Wet Blanket"のビデオ。

スタジオライヴでもこのヘビィさ。やはりカッコいい。#1 "Headache"を演奏してます。

2012-10-13

Freelove Fenner / Pineapple Hair E.P.

モントリオールで活動するトリオ、Freelove Fennerの新作「Pineapple Hair E.P.」はカセットテープとデジタルでFixture Recordsから今月にリリースされたもの。同レーベルからは2009年のアルバム「In the Bottle Garden」やコンピレーション以来となる。レコーディングとミックスをしたのはメンバーのCaitlinとPeterのスタジオでその名もThe Bottle Garden
今回もポップかつ、しなやかな魅力に満ちた全6曲。シックで美しいヴォーカルにミニマルとも言える様な一音一音がとても洗練されていて、それらが合わさった時は色の重なりの様に色彩豊かな広がり。(まさにこのEPのアートワークさながらだと思った)でもそれは決して極彩色では無い。落ち着いた曲調は全体的にゆったりしながらも抜群のポップ感覚が曲の隅々まで行き渡っていて実に粋な感じ。
 #1 "Pineapple Hair"や#4 "Paisley and Pastel"などに垣間見える、ほんのり漂う渋さや#3 "Mint"のどこか懐かしく落ち着いた煌めきも素敵です。以前から見られる1曲が2分前後と短いというのもまた軽やかで良い。うっとり聴いているとまるで炭酸の泡のごとく、すぐにスッと消えてしまい後に残るのはふっと優雅な空気感。シンプルなのに各曲はすごく印象的でじっくり聴くほどに深みがどんどん見えてくる。
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Fixture Records : cassette tape/digital[released] October 9, 2012
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#5 "Vicky's Day"のビデオも素敵。
Freelove Fenner "Vicky's Day" from Freelove Fenner on Vimeo.