2014-02-23

Fountain - s/t

カナダはビクトリアから現れた若手バンドFountain。今年2月にリリースされたセルフタイトルのアルバム。ビクトリアと言えば気骨溢れる演奏力にほのかに漂うスマートさが魅力のバンドが多いイメージがあるが、彼らもまたもれなく該当するようだ。それはやっぱり土地柄的な影響も関係してるんだろうかと思ってしまうがあくまでエッセンス的な物だろうし、当然それだけでは無いだろう。
#1 "Graham Street Landmark"からざくざくとダイナミックに突き進むギターサウンドには若いバンドらしい衝動的な勢いをを見せているが、それに添うように繰り出される知的で安定しているリズムが高まる熱を上手く分散、調和させている印象だ。#3 "Jesus '99"などではその境界線が見事に合わさる瞬間があり、かなりの爽快感がある。最後まで程よい緊張感を保ったまま緩急やひねりを使いこなすポストパンク的な音作りにはこなれてる感があってそれぞれ違った側面を見せてくれるので決して飽きさせない。ひりひりとした熱を放つ#5 "Ladybug Mating Ritual"やどっしりとしたサウンドにうねるメロディが冴える後半#8 "New Age Prices"なども然り、聴いていて思わずハッとするような発見に溢れたアルバム。
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bandcamp[released]January 10, 2014

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#3 "Jesus '99"のビデオ
Fountain - Jesus '99 from Dr. DiNinno Productions on Vimeo.

2014-02-17

Alden Penner - Exegesis

元The Unicornsメンバー、Alden Pennerのソロ作「Exegesis」ソロでは2011年にも出しており、今年に入ってからはEP「Precession」も発表。このアルバムにはこのEPからの4曲を含む全11曲。今まで何かしらの活動での作品を聴く事が出来ており、The Unicorns後に組んで活動していたCluesThe Hidden Wordsはやはり他のメンバーの影響や色が濃く出ている印象でそれも非常に興味深かったのだが、ソロ作は自身の内面にが反映されたような深みがある。
しかし完全に別物と分けてしまっている訳では無さそうだ。例えばひと際にぎやかな高まりを見せる#2 "Louis XIV"や#4 "Lovely Legs"はClues時代に演奏していた曲が元となっているようで、(おそらくライブで演奏していたのでは)それはもう一つのThe Hidden Wordsでの活動も然り。あくまで過去の活動あってこそのなのだろう。#3 "A Beautiful Dream"の開けた高揚感にも耳を奪われる。そういった意味では今までのキャリアを存分に落とし込んだ作品かもしれない。それぞれの曲によってアプローチや表現の仕方が異なれど、圧倒的な存在感を放っているヴォーカルは全てを統括するようで思わず聴き入ってしまう。それはソロになってからさらに奥行きが出ているようにも思う。哀愁を漂わせながら移ろう美しいメロディも相まって時に独特な浮遊感をもって、またある時はじっくり音に溶け込むように芯から響いてくる。
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もう一つ驚きだったのが先日のThe Unicorns再結成のニュース。まだ詳細は決まっていないのでファンとしては両手を挙げて喜べないが、オリジナルメンバーの3人でライブを行う計画などがあるそう。本国Exclaim!のこの記事から感じるのは今まで実は地道に計画が練られていたようにも見えるし、一方でただ単に話の段階とも取れる。もし実現すれば今年で解散10年後というのは偶然か必然か、続報が気になる。
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bandcamp[released]February 4, 2014

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2014-02-15

Red Sea - Yardsticks for Human Intelligence

アトランタで活動するアートロックもしくはノイズポップバンドRed Sea。今月に突然このタイミングでbandcampにリリースされた4曲「Yardsticks for Human Intelligence」
レコーディング自体は2012年だそうで、#1 "Tandem Stye"は以前から公開のみされていました。1曲の中で曲調がごく自然な流れで変化していくランダムな驚き。過去にはメンバーの他バンドでの活動もあったりと、もしかするとバンドで活動するのはそこまで頻繁では無かったかもしれないが、当然それはネットで見える範囲での話。数は少なくても曲の持つ奥深い煌めきは抜群。変幻自在でありながら決して難解では無く、むしろ聴く側にすっと入って来るような伸びのあるハーモニーに全体が覆われているのも持ち味。
#2 "Grape"後半の美メロからのまろやかながらどこか不穏で機械的なノイズとのギャップが面白い。#3 "Down With The Crown"ではずっしりとしたリズムにふわっと余韻を残していくギターサウンドも軽やかに映える。 #4 "Vacant Ring"もざらついた音を編み込みながら展開されていく豊かなヴォーカルの広がり。でも一貫して印象に残るのは時々浮き出て来るメロディの鮮やかさなのかとも思う。
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bandcamp : Digital[released]February 12, 2014

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昨年の映像のようですが "Vacant Ring"を演奏しています。

2014-02-10

【feature】Chad VanGaalen

photo via : Sub Pop

2000年初頭から現在に至るまで活動し続けるカルガリーのChad VanGaalenの通算5枚目となるニューアルバム「Shrink Dust」が4/29にリリース。アルバムが待ち遠しいのはひとまず置いといて、今回はSSW、アニメーター/イラストレーター、はてまたプロデューサーとマルチな彼の活動(主に音楽の方)を振り返ってみたいと思います。ライブはバンド編成が多いですが基本的に全部自分でこなしているからこそ生み出されるのではと思うほど、独創的な世界観は作品を出すごとに濃厚かつ広くなっていきます。思わずぎょっとするようなインパクト、恐ろしいんだけどついつい見てしまう。アルバムジャケットとビデオに関しては必ず自作を貫いているのも凄い所。プライベートでは二児の父親でもあります。

Infiniheart - 2004
ベッドルームのスタジオで録音されたというデビューアルバム。2004年、初めはカナダのレーベルFlemish Eyeからリリースされ、一年後にSub Popからのリリースとなった作品。まだ今と比べるとシンプルながらも有機的な音の表現の細かさや多彩性は当時からしてもずば抜けていたのでは。一方で自由でのびのびとした空気が流れているのも魅力。リリース自体は2004年ですが音楽活動は90年代からしているようなので、それまでの集大成的な意味もありそうだ。



Skelliconnection - 2006
前作の延長でほっこりハーモニカの音色が沁みるような曲もあれば、鋭角な攻撃性も垣間見えるようになった2作目。ヴォーカルもより鮮明になった印象だ。突然どたばたする実験的な展開にもっていかれるので油断できません。特筆すべきはなんと言っても2007年の Polaris Music Prize(カナダの音楽賞)にノミネートされたという事。ちなみにこのアルバムと次のアルバムはその年の10枚を選んだショートリストに入っています。



Soft Airplane - 2008
本国カナダはもちろん、特に国外の様々な所からの注目度がぐっと上がったのは3作目とも取れる。そんな事を知ってか知らずかますます混沌とした音世界が広がり、ひっそりとしかし確実にインパクトを残す哀愁感、どこかもの悲しげな歌声が印象的でこの作品で特に色濃く出ている。夜中に聴き始めるとするりと心の隙に入り込んでくるような中毒性もあり。アルバムに収録されている"Rabid Bits Of Time"という曲は映画「Norman」に使われました。



Diaper Island - 2011
4枚目となったアルバムは彼の自宅の新しいスタジオ、その名もYoko Eno(名前がとにかく気になります)で収録されたもの。突飛さがかなり薄れ、一貫としてどっしりと輪をかけ広がるように繰り広げられるサイケデリックな雰囲気に飲まれる。ある種の統一感が他のアルバムからすると珍しいのでは。キャリア的にもかなりの経験を積んでいるからこそ出せる円熟したサウンドが光る。メロディの美しさにも改めて注目したい。




Shrink Dust - 2014 (4/29)
そして約3年ぶりとなる5枚目。先行して新曲"Where Are You?"が公開されています。


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【他リリース作品】
その他過去に出したEPは全部で4枚ですが、その中でも2011年の「Your Tan Looks Supernatural」は収入のすべてが赤十字に寄付され日本の震災へ支援に使われるといったもの。すぐに支援を行動にしてくれたのも印象深かった。

一体未発表な曲はどのくらいあるんだろうか。過去5年分貯めた音源をカセットで一気にどーんとリリース、全8本。Chad VanGaalen: Cassette Tape Series 

時期的に大きくアナウンスされなかったような気もする2012年にリリースされたXiu Xiuとのスプリット12"、「Chad VanGaalen / Xiu Xiu - The Green Corridor #02」も聞き逃せない。


【別プロジェクト】
忘れてはいけないのがBlack Mold。2011年に唯一アルバム「Snow Blindness is Crystal Antz」を出しており、全編インストでよりエクスペリメンタルなサウンドが炸裂してます。本家で表現しきれない事をこっちにシフトして思う存分制作したような感じ。


【他バンドへのプロデュース】
もはやその界隈では親父/兄貴的な存在なのであろう彼がプロデュースしたバンドで一番知られているのは同郷のWomenだろう。2枚のアルバムのプロデュースはもちろん、解散後メンバーをライブのサポートに迎えたり、故Chris Reimerの後に出されたソロ作その名も「The Chad Tape」にも関わっている。ちなみにChrisのトリビュートアニメ制作にも参加。またCindy Leeのアルバムをプロデュースしたりと縁が深い。
 2011年は同じくカルガリーのExtra Happy Ghost!!!のアルバム「Modern Horses」もプロデュース。お互いファンだったそうですが、確かに共通する空気感を持っている感じだ。レコーディングされたのもChadのスタジオYoko Eno。さり気なく1曲だけ"Feeds Wolves Luck"でコーラスで参加しています。(控えめ過ぎて言われないと気付きません)

そして2014年にリリースされる作品ではトロントのAlvvaysのデビューアルバムをプロデュースしています。(リリースはおそらく上半期)→追記:7月末だそうです。 久々のプロデュース業なのだろうか。

【他バンドへのアニメーション制作】
確認できるのはこの4本、まだあるかも。音楽が違うとまた印象も変わります。
Love as Laughter - Dirty Lives (2006)
J Mascis - Not Enough (2011)
Mother Mother - The Sticks (2012)
METZ - Get Off (2013)

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といった感じにざっくりまとめてしまいましたが、これはあくまで音楽だけの話。最後にライブ映像を挙げて締めたいと思います。こつこつと繰り広げられる不思議なチャドさんワールドに今後も目が離せません。