2014-12-21

Absolutely Free - s/t

カナダ、トロントのAbsolutely Freeのデビューアルバム。
以前ブログで紹介した通り元DD/MM/YYYYのメンバーからなるバンド(現在はトリオで活動)だがあれから年月が経っている訳でもあり、このセルフタイトルの今作を聴いてその説明はもはやあまり意味の無い事の様にも思えた。その位このバンドでの方向性が明確に伝わって来る。
これまでに出したシングルの時と引き続きネオ・サイケデリックといった趣き。スペーシーな旋律に細やかな音の重なりがとにかく美しい。#1 "Window Of Time"ではじっくりと丁寧に積み重ねながらそれと逆行する様々な音がコラージュされている。浮遊感を程よくコントロールするタイトなリズム、そして特に印象に深く残るのはヴォーカルの力強さ。しっかりと曲の舵を取りながらも音にスッと溶け込むような柔らかさを保っている。かと言って決して歌メインにならない辺りはやはりエクスペリメンタルなバンド出身ならではと思う。先に公開されていた#2 "Beneath The Air"の華やかな高揚感には本当にうっとりするし、#3 "Striped Light"では躍動するポップな風合いを散りばめながらも印象自体は安定していて丸みを帯びている。#6 "My Dim Age"はサイケ的な要素がふんだんに感じ取れる曲でベタかもしれないがすっと浸透するように軽やかだ。その反発のごとくアグレッシヴな展開の#7 "Vision's"も面白い。夜寝る時に瞼の裏側に残像がチラチラ見える様なぼんやりとした多彩さに溢れている、そんなアルバム。
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Arts & Crafts : LP/CD/Digital [released]October 14, 2014
Lefse Records : LP/CD/Digital[released]October 14, 2014

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2014-11-29

Dories - Stripped

モントリオールで活動するDories。現在のメンバーはJosef McGuigan、Aidan O’Reilly、Chris Hauer、Spencer Curtisの4人でこの編成になったのは2014年ですが結成自体は2012年。今までbandcampなどで曲をアップしたりしていましたが、カセットテープとデジタルでEgg Paper Factoryから10月にリリースされたこの「Stripped」が彼らのフルデビュー作となるようです。6曲入り。
#1"Miniatures"はミニマルなリズムが根底にあってそこからひりひりとしたギターサウンドが大胆に盛り込まれるのが印象深い。#2 "Drip"ではパワフルな部分が突然飛び出し、#5 "Small Circles"ではローテンポから後半一気に加速する。時に壊れそうな程儚く響くメロディ、時に鋭くダイナミックだ。1曲の中で様々に変化するポストロック的な感じだが、その高低差が彼らの場合ぐっと凝縮され非常に明快。一見ランダムな様でしっかりと構築されたメロディとポップさが魅力かもしれない。要素が多くてもまとまりがある。でもやはりこうだと思ってもスルっとかわされる様な展開が全く掴めないのが聴いていて非常にワクワクする。動静の切り替えがなめらかで美しい#6 "Weaving Baskets"も必聴。
レコーディングは今年の2月で携わったのがRaff McMahan (Telstar Drugsのメンバー)というのも納得。新しい世代と言うかカルガリーとモントリオール、ビクトリアなどでこういった柔軟なセンスを持つバンドが同時多発的に続々と出て来ている気がする。今後もDoriesはもちろんその周辺にも注目。
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Egg Paper Factory : Cassette/Digital [released]October 11, 2014
bandcamp 

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2014-11-22

Plastic Factory Records - Meet the Factory

Plastic Factory RecordsはモントリオールのGregとMikeによる新しいレーベル。今年の3月にNap Eyesの「Whine of the Mystic」から始まり、それに続く8月にはこのLP2枚組のコンピレーション「Meet the Factory」をリリースしている。 
モントリオール、ハリファックス、ビクトリア、ニューヨークなどの出身、全20バンドから1曲ずつ入っているのだが曲目を見るだけでもレーベルの主宰者2人が関係した、もしくは周辺のバンドが集まっているのだろうなと想像が出来る。と、言うのもMikeはEach OtherのメンバーでありHomeshake、Un Blonde、Play Guitar、Nap Eyesなどはもちろん、彼らと繋がりの強いバンドが多い。自身のバンドもアルバム未収録の#14 "Buyer Be Brave"が収録されている。全体的に共通するのは軽やかでポップ、でもこだわりがしっかりある味わい深いユニークな楽曲が目白押しという印象。さりげなく変化球みたいな感じがして面白い。気のせいだろうか各バンド本来の雰囲気と今回は少し違う様にも思えた。(インナースリーブにはそれぞれの曲のレコーディングした場所などが記載されている)コンピレーションなのであれこれ聴きながらデジタルでも存分に楽しめるのだがこうやってフィジカルとしてLPを出す所が良いと思うし、がっつり聴けるのも嬉しい。暖かみのあるアートワークもどこかこの界隈のバンドの雰囲気が垣間見える気がした。 
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Plastic Factory Records : LP/Digital [released]August 6, 2014 
 
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(※来年1月に同じくこのコンピにも収録のEolaと共に来日しますね!)Homeshake - I Don't Play

Hand Cream - OK OK OK

Freelove Fenner - Ursula Major

Fake Buildings - Matador Records

Each Other - Buyer Be Brave


2014-11-18

Monomyth - Saturnalia Regalia!

カナダ、ハリファックスのMonomythの今年7月末にリリースされた待望のデビューフルアルバム「Saturnalia Regalia!」
これまで出して来たEPなどにあったシューゲイザー的な部分はあくまで曲の一部の要素として収まっているのが意外。 それによりアルバム全体に統一感が生まれている。彼らはムードだけでごまかさずにメロディとハーモニーを重視したかったかもしれない。それは自らの名前が付いた#1 "(Theme From) Monomyth"からも感じられる。シンプルといえばそれまでなのだが、全体的にほのぼのとした独特のテンポを持っている。まったりサイケ風な#2 "Pac Ambition"で特に顕著だ。#3 "Candleholder"ではメロディは軽やかで明るいトーンなのに時々チクチクと引っかってくる甘酸っぱさも印象的でとても良い。居そうで数少ないバンドだと思う。まだデビューアルバムだがこの部分はこの先強い特徴かもしれないし、勝手な意見を言わせてもらうならばぜひ持ち続けて欲しい。ただその素直さは聴く人を少しばかり限定してしまうかもしれない。(もちろんそれはそれで良いと思う)#7 "Patsy"はアルバムの中でもひと際ロマンティックだ。12星座があしらわれたケーキのアートワークが意味する所は不明だがなんとなく合っている様に思えて、生活感のあるドリーミーな雰囲気が漂う。 それに憂いを帯びつつ加速する#5 "Medicine Man"ではパワーポップ感があるし、#8 "The Big Reveal"のしっとりとしたフェードアウト感も美しい。 
どことなく地元愛が強いのかもしれないが、そういえばハリファックスはSloanの出身地だと言う事もなんとなく頭に入れながら。いや、あれこれ考えずに素直に聴くのが一番。そんな居心地の良さも有りな一枚。
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Mint Records : LP/CD/Digital [released]July 22, 2014 
bandcamp[released]July 22, 2014
 
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Patsy • MONOMYTH from Seth Smith on Vimeo.

ちなみにこのビデオの監督のSeth Smithは同郷のバンド、Dog Dayのメンバーでもありますね。

2014-08-16

Spoon - They Want My Soul

テキサス、オースティンのSpoonの4年ぶり通算8枚目のアルバム「They Want My Soul」それぞれ別バンドやソロ、プロデュースなどの活動を挟みつつとはいえ、デビューアルバムが1996年なのでもう18年という間バリバリの現役で活動し続けているという事の凄さ。正直な所、私は6枚目「Ga Ga Ga Ga Ga」で彼らを知ったかなり後追い派なのだがそれ以前の作品を聴いてもどれも興味深い。作品によってアプローチは変えても芯の部分では一定の、変わる事の無い情熱や姿勢を貫いている事が伺える。当然と思うがそれはかなりの創意工夫と積み重ねて来た実積があってこそなんだろうなと感じる。
話は逸れたが今回のアルバムもそんな安定のSpoonらしさを遺憾なく発揮しながらまた違った側面を見せてくれる。メンバーも5人に増え(Divine FitsのライブメンバーだったAlex Fischelが加入と知り納得)細かい表現での幅がさらに広がっているのだろう。そしてレーベルもLoma Vistaに移籍している。#1 "Rent I Pay"では頭にズンと響くようなギターサウンドの存在感。一転#2 "Inside Out"ドリーミーなニュアンスで一瞬違う次元に引っ張られたような不思議な感じがする。この現象は今回のアルバムの随所に見られる特徴かもしれない。ダイナミックでクラシカルな部分とスマートで近代的な部分とを故意に行ったり来たりしている。違和感が無くスムーズだ。#4 "Do You"はそれが丁度混じった中間地点の様な印象。もちろん#3 "Rainy Taxi"でのエモーショナルな熱を放つ曲も良い。魅力の一つでもあるのが楽曲自体はキャッチーで親しみやすいのにやや斜めから切り込んでいる様な歌詞。タイトルからも分かる様に#8 "They Want My Soul" もまた然りだ。不満をユーモアに変えるようなタフさ、ひねくれているようでもなぜか時に非常に正直でシンプルに感じる。聴き手(もしくは彼ら自身かもしれない)を毎回飽きさせる事なく、自分達がやりたいと思う事を堂々と自信を持って表現しているのがひしひしと伝わって来る。
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Loma Vista : LP/CD [released]August 5, 2014 
MAGNIPH(日本盤) : CD[released]August 6, 2014
 
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余談ですが7月にKEXPで行われたセッション映像。新作からだけで無く過去作からも多く演奏しているのに注目。2nd収録のMetal Detektor(98年)もさりげなく。ちなみに来日は過去2度だけで日本でもまたライブが観たいと切望しますよね。

2014-08-15

Actual Water - Call 4 Fun

カナダ、トロントのActual Waterのニューアルバム「Call 4 Fun」
ジャカジャカとかき鳴らすギターに思わず心が踊る。そんなストレートである意味では古典的なポップ/ロックなサウンドが魅力。若さ溢れるガツンと勢いのあるインパクトなので若いバンドと思いきや、2008年頃から活動しておりキャリアは意外と長め。過去音源は現在でもbandcampで聴く事が出来る。今年7月からリリースされたニューアルバムもこの手のサウンドが好きな人にとっては正にツボを押さえまくっている。#1 "Take the Stairs"から余計な小細工をせず真っ正面から勝負する様は潔い。しかも至る所にハーモニーを上手く織り込むのが基本としてあるのでどこかこなれた感もある。良い意味でささくれの様なガサツキはそのままに#5 "Latoya"などで見せるセンチメンタルさすら感じるメロディが泣ける。キレキレに突っ走るでも無く、だからと言ってダレる事無く程よい緊張感で聞いていて安定感がある。#6 "Waldo Jackson"や#7 "Three O’Clock Kids"もなんとなく着地点が見えてるのは重々分かっていてもやっぱり良い。あれこれ考える前にウキウキする。アルバムが9曲で22分強というお決まりのスッキリ感も痛快。
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Bad Actors : LP [released]July 1, 2014 
*iTunes : Digital
 
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2014-07-20

The Group Sound - Romantic Notions

モントリオールを拠点に活動するThe Group Soundのニューアルバム「Romantic Notions」bandcampにリリースされたのは今年の7月ですが、レコーディング等は2012年と13年との事。
前作と比べると少し雰囲気に変化があるようにも思える。良い意味で落ち着きがあると言うか、メロウ要素がぐっと濃くなった感じがする。#1 "Art School Crush"からそんな休みの昼にまどろみながら聴きたくなる心地よい気怠さに包まれます。 未だ梅雨開けしないこの時期にフィットするような、全体的に湿度の高いサウンドなのだがどこか飄々とした軽やかさもある。しかしインストゥルメンタルの#3 "Migration"では突如コズミックな印象でやや機械的なサウンドを展開したと思いきや、そこから渦を巻きながら#4 "Hate So Eazzy"になだれ込む様に一瞬くらくらとする。先にビデオで公開されていて、タイトルにもなっている#7 "Romantic Notions"はこのアルバムの中でもひと際目立つ存在だろう。メロディの移ろいが美しく、その後全てを飲み込み風のように過ぎ去っていく躍動感。のびのびとしたヴォーカルとギターの音色の揺らめきに浸れる#8 "I, So Don't Care"なども必聴。細やかな感情の変化にシンクロするような音の豊かさがひっそりと垣間見えるアルバムではないだろうか。
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 *bandcamp : digital [released]July 6, 2014

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Group Sound - Romantic Notions from Group Sounds on Vimeo.