Freak Heat Waves はカナダ、ビクトリアのトリオ。今年はSled Island 、Pop Montreal 、Halifax Pop Explosion と本国のフェスに数々出演している。過去リリースとしては2010年にFan Club Music Clubから MISSION BAY 7"をリリースしていて現在でもデジタル音源が彼らのbandcamp で試聴、購入可。シンプルながら流れる様なメロディが暖みを感じる2曲。
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そして今年の9月にセルフタイトルのフルアルバムを公開。まだ購入は出来ない 様ですがこちらも全て聴く事が出来る。こちらは7"と比べると印象が随分変わっています。変わったというよりは 表現が一段と豊かになり、 それによってぐっと洗練された感じ。このアルバムでは鋭さが際立ち、バンドの全体像がはっきりと浮かび上がってきます。残響の底に溶け込む様なボーカル、 どこか儚くも 美しいギターのメロディ、 小気味良い 直線的なドラムの叩くリズムとメロディに添うベースライン 。張りつめた空気が漂い表面はひんやりとしていながらも 内部は ふつふつと熱しているといった具合。 全体を通して聴くと 様々なテイスト(例えるならクラウトロックやアンビエントなど)が絡み合いながらも、とてもモダンな印象。まるで漆黒の中を明かりで照らしながら進む様な緊張感。9分を越える#8 "Instructing"の反復するリズムに暗から明へ変化するメロディがとても魅力的な展開。
#2 "Nausea"も特に必聴です。
アートワークからも分かる様に ビジュアルもクールです。このアルバムが今後デジタルで販売するのか、どこかからフィジカルでリリースされるかも全く分かりません(向こうのライブ会場とかはどうなんでしょうか?)がすごく気になります。
12/9追記:現在はbandcampからLP(限定300枚)とデジタル音源が購入出来る様になりました。
追記2 : なおクレジットを見ると分かるのですが、アルバムのプロデュースおよび録音は今年2月に残念ながら亡くなってしまった元Women、The DodosのChris Reimerだそう。 このインタビュー で経緯など少し出て来ます。
この曲はアルバムに無い曲ですが音のイメージぴったりな映像です。ライブの雰囲気が分かるかも。
Freak Heat Waves 07/12/12 from Anthony Di Ninno on Vimeo .
サンフランシスコのThee Oh Sees の9月に発売されたニューアルバム「Putrifiers II」
毎年必ず1枚は当たり前、(去年は2枚)他にもシングル、スプリット、コンピレーションなどもあって今までの作品数は相当ある。しかし彼らの凄い所はそのリリース頻度と言うよりは安定している各作品の充実度、クオリティにあると思う。1曲単位では分かりづらいかもしれないが、アルバムごとに質感や雰囲気ががらっと違うので毎回新鮮な発見があるのが聴いていてわくわくする。なのにどこを切ってもThee Oh Seesとしての根本的な部分は保っているという安心感。
ジャケの人面犬が今回もなかなかインパクト大だが、#3 "So Nice"や#6 "Putrifiers II"の様な全体的にゆったりとした曲が多く、サイケなまどろみがなんとも魅力的。そうでない曲でさえいつもより渋い格好良さがあって落ち着いてじっくり聴きたくなる。去年後半のアルバムがサイケ・ガレージでバッキバキのアルバムだったのでその差が際立つのでなおさら。(もうツインドラムじゃないっぽいし)今回ガレージ要素はちょっと離れた所で顔をのぞかせている。でもこれもきっと今回だけのテイストなのだろう。
大元からだと活動歴は15年ぐらいになり、今までのOCS→The OhSees→Thee Oh Seesとバンド名の変化の様に彼らは決して極端に飛躍しすぎて全く別のバンドになる事もなく、こつこつ作品をリリースをして積極的に自分達の今を表現し続けている所が本当にカッコいいバンドだなと今年もまた新作を聴きながら思った。
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* In The Red Records : LP,CD [released] September 11, 2012
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ライヴがとにかく良さそう。ニューアルバムから#8 "Lupine Dominus"
カナダの4人組Fist City が今年6月にBlack Tent Pressからリリースしたニューアルバム「It's 1983 Grow Up!」
バンドの始まりは2009年(本格的な活動は2010年からっぽい)アルバータ州レスブリッジで、元は別々のバンドで活動していた模様。今回フルアルバムとしては2作目。1曲目"Boring Kids"からエネルギッシュに飛ばしていてカッコいい。感情がもろに伝わってくるヴォーカルにキレあるギターサウンド、パワフルなドラムとベースが一体となって生まれる疾走感がなんとも痛快。うねるサウンドの残響までもがエネルギッシュ。パンクな曲が基本ですが、#3 "Weak End"や#6 "Wet Freaks"など所々にふっとキーボードの音色が入る事で奥行きが加わり、メロディ/キャッチー感がより前に出てきます。これは突っ走る要素とも言うか緩急のバランスが絶妙です。最後の#12 "Never Bored"の圧倒的な勢いで完全燃焼。そして後に残るのは心地よい爽快感。
聴いた後体温までヒートアップしそうなサウンドの渦に飲まれそうになる事必須です。今年は同じく6月にシングルBuried/Cryptic Transmissions 7″ もリリースしていてこちらはLa-Ti-Da Records から。2曲ともアルバム未収録。
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* Black Tent Press : LP,CD [released] June 1, 2012
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東京を拠点に活動する4人組、ホライズン山下宅配便 の今年5月にリリースされたニューアルバム「りぼん」。2月リリースのシングル「期待」 やこれまでの作品はとんちれこーど からですが今回はCompare Notes から。一聴すると奇抜に感じる人も居るかもしれませんが確実なポップソング。(実際、「期待」をリリースした時のこんなプロジェクト も面白過ぎますが。)聴く度に違う側面がひょっこり見える感じがやっぱりすごい。
基本はポップさ全開なのにレトロな質感を纏った滲み出る哀愁。曲の随所に見られる間もなんとも渋い。音に夢中になっていると猛烈に気になってくるのが歌詞。ふわっとした歌声をよく聴くと一癖も二癖もある不思議な世界観。でも妙な説得力。それに添う様に繰り出される綺麗なハーモニーが頭から離れません。うっとりしてしまうメロディに小気味良いリズムが全編に渡りもうユニークが止まらない。
弦楽器、および管楽器(他にも多数)も多く取り入れられていますが、曲をぐっと色鮮やかにしています。のんびりとした曲調から急展開する#2 "点ブレイク"や#3 "オリンピックの前日"の軽やかな奇妙さも素敵。特に#5 "風呂の歌"のこもった空間の表現が歌詞通りのぼせます。お風呂ってサイケなんだなと思いました。ラストを飾る#12 "ガラスの階段"の至っては立ち上がって拍手したくなる様な高揚感。なんだか感動的でさえあります。
※Jet Set のページで少し試聴できるみたいです。
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* Compare Notes : CD [released] M ay 20, 2012
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アルバム「りぼん」から#8 "ハコビヤ"のライヴ映像
と、アルバムのリリース時に発表されたインタビュー ?CM?不思議映像。(でもアルバム収録曲も出て来ます!)
Divine Fits のメンバーはSpoonのBritt Daniel、元Wolf Parade/Handsome FursのDan Boeckner、New Bomb Turksの Sam Brownという3人からなるまさに夢のコラボなバンド。今年5月、突然の Handsome Furs解散のニュースの後にサラッと結成が発表されましたが、早くも8月末にMerge Records ( Euro、UKはAnti) から リリースとなりました。クレジットによると今年5月にレコーディングを始め、マスタリングまでを1ヶ月でこなしてるという仕事の早さ。前にブログで書いた ようにSpoonとWolf Paradeのつながりは書きましたが、そんな肩書きの話題性に引けを取らないかなり本気なアルバム。
サウンド的にざっくり言えば SpoonとHandsome Fursのぞれぞれの要素があまり偏る事なく、かと言って個性が消える事なくミックスされていてかなり高相性。実際メインヴォーカルの割合もほぼ同じ位に。今まで気にしてませんでしたが2人のヴォーカルの熱っぽさにはどこか似ている部分があるんだなと実感します。 リズムは骨太かつ直線的で、忘れちゃいけないのがSamの叩くドラムも力強く支えていて好印象な点。 エモーショナルな熱量を放つ反面、 Britt のタイトでユニークな音響部分 や Danのダンサブルで時に痺れる様な音の存在感が光ってます。同じ部分はさらに強力に、違う部分も お互い 上手く活用している様な所がさすが。現在はツアー中で、9月5日にMAGNIPH から 日本盤もめでたく発売されるのでここはぜひとも日本でもライヴが観たいと強く思うこのごろ。
追記: BrittはDivine Fitsの他にも新しいバンド に関わっているそうで(大元のSpoonの方も変わらず継続か)かなりの多忙っぷり。
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*US Merge Records : LP, CD, Digital [released] August 28, 2012
*Euro/UK Anti Records [released] August 27, 2012
*日本盤CD: MAGNIPH [ releases ] September 5, 2012
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サポートメンバーも加わりライヴは4人な模様。 これは Brittがヴォーカル/ギター、 Danがベースを弾いてます。超カッコいいです。