2013-11-24

Lab Coast / Walking On Ayr

 
2008年終わり頃から活動するカルガリーのLab Coastの最新アルバム「Walking On Ayr」これまでCD、カセット、スプリット7"などで様々なレーベルから出していましたが今回はMammoth Cave RecordsからCDとデジタルでのリリース。
#1 "As Usual"を筆頭にのびやかで暖かいメロディとざくざくとした質感のバンドサウンドにぐっと引きつけられます。スプリットに収録されていた曲もいくつかあって背後にうっすら漂うハーモニーが印象的な#7 "Don't Wanna See You"は以前EPに収録されていた曲。このアルバムではそれより少し長いバージョンに。途中のつなぎのような物も含め曲すべてが3分未満に収まってコンパクトだ。#6 "For Now"も然りで基本ポップで詰め込み過ぎずに完結する心地良さはやっぱり最大の魅力。でもたまに表れる曲の余韻も聞き逃さないようにしたい所。#13 "Walken on Hairs"ではライブ音源と思われるもの(歓声なども聴こえる)もあって色んな場面を切り取って自由に貼っていったような楽しさ。もちろんバンドのバチッと息の合った時の煌めきはしっかり持っているし突発的な勢いもある。でも決して気合い入れてガチガチタイプでは無さそうだ。でもそのある種「ラフさ」と内に込めた熱量との絶妙な割合。どちらかが多過ぎてもこの空気感は出ないのではと感じた。それが曲の中をすり抜けるように浮かんでは消える、でもどこか存在感のあるヴォーカルや人懐っこいメロディの強さを際立たせている。
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Mammoth Cave Records : CD/Digital[released]July 22, 2013 
 
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2013-11-19

Night Beats / Sonic Bloom

シアトルを拠点に活動しているトリオ、Night Beatsの今年リリースされたフルアルバムとしては2枚目の「Sonic Bloom」リリースは前作と変わりReverberation Appreciation Society(つまりAustin Psych Fest)からのリリース。
その事や目を引くビビッドなアートワークから察する通り、聴いた途端から中毒性の高めサイケデリック/ガレージサウンドにアルバム全体が覆われている。
タイトルの#2 "Sonic Bloom"は目眩のしそうなギターサウンドが耳に残り、不気味な笑い声も入って曲にさらに怪しさが増す#8 "The Seven Poison Wonders"もかなりインパクト大だ。じわじわ粘着系の曲もあれば、骨太でソウルやR&B的な要素もちらりと感じられて渋い曲も。トリオならではのタイトさは十分にあっても勢いや雰囲気任せにしない、曲の中に細かい表現が盛り込まれていて程よい巧妙さも感じられてユニークだ。やや毛色の違う#12 "At the Gates"の存在感も効果抜群。しかし狂気の様なピリピリとした緊張感は最後まで続いてたるまない。むしろラストの#13 "The New World"ではさらに過熱してストイックな印象も。メンバーは他のサイドプロジェクト、例えばThe UFO Club(The Black Angelsのメンバー)やNight Sun(Curtis Harding、Black Lipsメンバー)のメンバーでも活動しているだけあって、自己完結だけに収まらない柔軟さもあるのだろうか。テキサス周辺のド定番サイケなのかと思いきやそれだけで無く、四方八方に広がりを見せる中身の濃いアルバム。
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Reverberation Appreciation Society
 LP/CD/Cassete/Digital[released]September 24, 2013 
 
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ちょっと怖めな#8 "The Seven Poison Wonders"のビデオ

2013-11-10

The Diet / (self-titled)

カルガリーのThe Dietのセルフタイトルのフルアルバム。現在はbandcampでデジタル音源のみ公開、購入可能となっています。このアルバムは以前にあったEP5曲がさらに派生していった内容なのかもしれませんが、サイケデリックな音の広がりとポストパンク要素が十分に披露され、おそらく期間的にもいくつかの時期に分けて制作しているのだろうか、バンドとして一貫した雰囲気を持ちながらも各曲が練られていて丹念な印象も。#3 "Duplicators"のスリル加減や#4 "Kids By The Pool"のまどろみ感なども聴きどころですが、ハーモニーにも重点が置かれている。また中盤のインスト曲、#6 "Hysterical"ではエクスペリメンタルなサウンドも垣間見えて一面性だけではない事も分かった。程よいバランスを保ちながらほろりと流れるメロディは美しいながらも、どこか儚げで危うい。全体に霧のように広がる冷たい空気感と繊細で暖かいハーモニーとの対比も魅力の一つ。しかし以前からあった最後の#11 "Cult Babies"はやはり一番ディープでインパクト大だ。ずぶずぶと大きなうねりに飲まれるようなサイケ感がうまく結晶化されている。このアルバムは曲ごとに枝分かれしていると思った理由はもう一つあって基本的にはバンド主体だが一部、元WomenメンバーのPatrick Flegelが3曲、Chris Reimerが1曲レコーディングに関わっています。(※どの曲かはbandcamp参照)元々交流が深かった両バンドでしたがこの辺がまた違ったニュアンスが出ている要因だろうし深みが増して興味深い。
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bandcamp : Digital[released]July 28, 2013 
 
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#3 "Duplicators"のミュージックビデオ