2015-05-25

Red Sea - In The Salon

アトランタの4人組Red Seaの最新作「In The Salon」3月にBayonet Recordsからカセットとデジタルで。ちなみに同レーベルから3バンド同時リリース。元々昨年に一度bandcampにアップされていたと思うのですが、改めてフィジカルも含めてのリリースといった所でしょうか。
今までのハーモニー感は保ったままでさらに捻りを加えたモダンな雰囲気が増している。(アー写などを見るとバンド自体のルックスも然りかも)曲自体がよりアート的になったというか、くるくると変化していくポストロックな展開がとてもユニーク。パッと聴き始めの印象はある意味とっつきにくくアバンギャルドな雰囲気なのですが、それが決して唐突なものでは無く過去の音源から分かる様にがっちりとしたバンドアンサンブルという土台があった上でといった印象を受けるので非常にスムーズで自然。そういう事だったのかと後からじわじわ良さがやってくる感じ。リリースする度に面白くなっていっています。現状維持に走らず独自の路線でゆるやかに変化していくバンドは意外と貴重なのではとも思った。
#1 "Life Image Module"は穏やかなメロディながら躍動感が印象的。タイトル曲の#2 "In The Salon"にはシンセが入りちょっと印象が異なりますが、Josh Hughes(おそらく同じアトランタで活動するStevie Dinner、またWarehouseのメンバーでもある)のが関わっている模様で納得。ちょっと違った風合いを出している。リズム感が面白い#5 Participationや続く#6 On The Marbleもメロディが際立つ。情報がまだまだ少ないバンドかもしれないが、今後のリリースも楽しみだ。
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Bayonet Records : Cassette/Digital[released] March 3, 2015
 
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2015-02-08

Freak Heat Waves - Bonnie's State of Mind


カナダはビクトリアのトリオ、Freak Heat Wavesの2ndアルバム「Bonnie's State of Mind」今年2月にHockey Dad Recordsからリリース。
2012年のデビュー作は元Womenの故Chris Reimerがプロデュースしたもので割と全体のトーンが揃っていて、黙々とかつ緩やかに展開される良さがあったのだが今回はそれよりもっと大胆に枠からはみ出した面白さがある。良い意味で唐突、どこかいびつな感じがする所がカッコいい。もちろんクラウトロックの影響が大きいと思われるのだがそんな方向性がより明確となりインパクトも格段に強くなっている。元からスマートさはあったが完全に垢抜けた感じだ。
クレジットによるとレコーディングが2013年4月から翌年の1月までと長期間、複数の場所で行われたがカルガリーとペンダー島(バンクーバーとビクトリアのほぼ中間地点)が主で前者はMontyことScott Munro(Viet Cong)と後者はArran Fisher(2014年のシングルでも関わっている)が多く手がけている様だ。なので各曲の質感に変化が出ていてまさにアルバムのジャケットと同じく断片的に切り取ったコラージュ的な雰囲気だ。ちなみにこのアートワークもバンドの手による物らしい。ギターサウンドがメインだった前作に対し#3 "Design of Success"など前半ではレトロなエレクトロ感もメロディや残響として随所に盛り込まれている。この2つの要素の繋がり方がアルバムの聴き所の一つかもしれない。
#5 "Dig a Hole"や#6 "A Civil Servant Awakening"のクールで淡々としたドラムとそれに完璧に沿うベースラインの一体感は強固でグルービーな印象を与える。この辺が機械的なサウンドともマッチするのだろう。そこに分かるか分からないかぐらいのズレと言うか一歩引いた間があるギターサウンドがアバンギャルドな雰囲気を醸し出している。内側に熱を持ちながらも平静を保つヴォーカルも然り。白眉はアルバム中盤の#7 "Melt In Your Home"だろう。おどろおどろしさが不穏さを強調していて鳥肌が立つ。ちぐはぐかと思いきや全てが巧く繋がっているのだが#11 "Impossible Mind Groove"から#12 "Comfortable Conversation"へブチッと切り替る所も好きです。
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Hockey Dad Records : LP[released] February 3, 2015 
bandcamp : Digital

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アルバムのプロモ映像。いい感じな雰囲気です

2015-01-20

Viet Cong - s/t

誰もがこのバンドを説明する時に同じ様な感じになってしまうのを承知でもう一度説明したい。カルガリーのViet Congは元WomenのMatt FlegelとMike Wallaceが始めた新しいバンド。というのが一番関心が集められている所であるのは間違いない。でも注目すべきはそれだけでは無くて、Scott Munro(Lab Coast、Chad VangaalenのバンドでMattと共に演奏していた)とDanny Christiansen(Sharp Ends)の4人で活動している事。昔からお互い馴染みがあって全員見事に地元出身。つまり同じ方向性であれば絶対結束力の強いアルバムになると思っていた。
すでに2013年にリリース(2014年に再発)の"Cassette"である程度方向性が現れていたが、今年リリースされたこのデビューフルアルバムでもニュー・ウェーヴ、特にポストパンクやサイケデリックなどの要素が軸となっているのは変わりないが、よりダークにしかし明確な印象で格段に強度を増している。何かのインタビューで本人達も認めていた気がするが、アメリカよりイギリスの音楽に影響を受けていると言うのには納得。なにより堂々と自信に満ちている様に聴こえるし、そして自己満足では無くて確実にこちらに訴えかけて来る気迫が凄い。しかもレーベルは以前と同じJagjaguwarFlemish Eyeである事も胸アツ。

当時2枚目のアルバムを出し人気がどんどん上り始めていた頃にWomenが解散、(せざるを得なくなった)そこから別のバンドで活動したり音楽活動は各自それぞれ続けていた。そして残念な事にメンバーの死もあった。どの時点でこのバンドへシフトしたのかは分からないが、結局は過去の色々な出来事があったからこその今であり、結論なのだろう。そういった所に彼らなりの音楽への変わらない情熱を感じる。 
だからもうWomenと比べるのは野暮な事なのかもしれない。目指す所が違うのだろう。でも名残りのような部分も瞬間的にちらほらあるのは見逃せない。考えたらそれは自然な事だろうけど。特に#3 "March of Progress"のトンネルを進んでいく様なダークさからふっと表れるギターの繊細なハーモニーに一瞬その気配を感じた。が、そこから転調してさらに展開していくのが聴き所。先に公開されていた#4 "Bunker Buster"でも分かるが雄弁で力強いヴォーカルとベースライン、ダイナミックなドラムはバンドの要だろうし、それを支えるギタリスト2人のノイジーかつ鋭いサウンドも絶妙に絡む。この辺のバンドアンサンブルはさすがだ。#6 "Silhouettes"の混沌としたパンクさもカッコいいのがだそこからぐっとメロディックになっていくのも良い。そしてラストの#7 "Death"こそが全ての答えなのでは思えて来る。Mattのヴォーカルがひと際感情的なのがとても印象に残る。暗い影を振り払うかのごとくその後中盤からの怒涛の全力疾走がもはや感動さえ覚えた。周りに媚びらず自らの音楽を追求していく強い姿勢が垣間見えるアルバムだった。本当に素晴らしいと思う。
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Jagjaguwar / Flemish Eye : LP/CD[released] January 20, 2015 

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2015-01-17

Meat - Special Treat

アトランタのDoug BleichnerによるMeatのフルアルバム「Special Treat」
昨年の10月にbandcampでデジタル音源とSkeleton RealmからCDが出ている。
彼はWarehouseのドラマーでもあるのたが、レーベルの説明によると2008年頃からシーフードレストランに小さな穴を掘った(地下って事だろうか)"rat's den"でレコーディングを初め、EPSlime Master's Feast」(ちなみにフルアルバムにも入っている4曲の初期バージョンかも。現在はフリーダウンロード可)を作り、そこから出で今作のフルアルバムを制作したと言うやや謎の説明が。そんな感じで完成したと思われるこのアルバムは1"Hat"を聴けば分かる様にとにかく軽快・明快でキャッチーなギターサウンドが一番の魅力。どこか飄々としたヴォーカルも当然曲と相性抜群。#2 "Trash"といい、ちょっとだるっとした雰囲気も相まってマイペースさがなんとも良い。#5 "Diet Coke"では哀愁感も醸し出しながら1曲ごとで完結している印象も受けるが、各曲それぞれ感情はとても豊かで自由にやりたい事をやっている様な風にも思えた。やはりほぼ自分で制作しているのかもしれない。
そもそもMeatという名前やビデオなどからも伝わるが、Skeleton Realm周辺の音楽はもちろん続々増える謎の動画など良い意味でいちいちギャグっぽい部分も好きです。
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*bandcamp : Digital[released]October 5, 2014
Skeleton Realm : CD

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#2 "Trash"のビデオ。最近こういう一昔前のビジュアル感覚を取り入れてるの多い気が。中盤に日本語のデロップが突然出て来ます(笑)

2015-01-12

Homeshake - In the Shower

モントリオールのPeter Sagarのプロジェクト、Homeshake。Mac DeMarcoの元ライブギタリストでしたが今作あたりから自身のバンド中心になったのでしょうか。昨年の10月にリリースされたニューアルバム「In the Shower」モントリオールのDrones ClubでレコーディングされMike Wrightが携わっている。 
もくもくとした独特の浮遊感を漂わせながら始まる#1 "She Can't Leave Me Here Alone Tonight"から前作より深くスムーズになっている印象だ。R&Bやソウルの影響も受けていると思われる雰囲気や方向性はそのまま貫きつつも輪郭がはっきりしてきて広範囲に響いているのではないだろうか。#2 "Chowder"などでも少し哀愁を伴ったヴォーカルがさらに微妙な温度変化を巧く演出している。とてもエモーショナルに聴こえる時もあれば月夜の様にひっそりとした印象に聴こえたりと常に変化して一定では無いがスーっと耳に浸透してきて本当に心地よい。#3 "Making A Fool Of You"でもゆるやかにアップダウンするギターサウンドにまどろむ。そして所々にコロコロとした不思議なサウンドがちょっとしたスパイス的に導入されているのもレトロスペーシーで面白い。曲の細かい部分まで聴き逃せない。#8 "Slow"はアルバムで一番振り幅の広さを見せていて流れるような美しさ。
渋さの中に艶っぽさも見え隠れしていて、それに沿うようにぴったりフィットするリズムも非常にまろやか。感情をふんだんに込めているんだけど丁寧かつ穏やかで肩の力がふっと抜けるリラックス感がなんとも小粋なアルバム。じわじわと聴く度に深みを増すかのよう。
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Sinderlyn : LP/CD/Cassette[released]October 7, 2014 
iTunes : Digital 
日本盤は2015年 1/14に発売
 
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そしてなんと2015年1月にJerry PaperとEolaと共に来日ツアー全5公演を行います。こんなチャンス、これは観に行くしかないです!

【Jerry Paper/Homeshake/Eola 来日ツアー】

1/12(月) 神戸 - Space Eauuu
1/13(火) 大阪 - HOP KEN
1/16(金) 岡山 - studio CRAZY MAMA 1
1/17(土) 東京 - Soup
1/18(日) 浜松 - ZOOT HORN ROLLO

2015-01-03

Moon - s/t

カナダ、ハリファックスの5人組Moonによる、昨年12月にリリースされたセルフタイトルのアルバム。バンドの結成自体は2012年に始まり、過去にはEPやスプリットもリリースしている。今作のレコーディングは2014年春との事。
#1 "One Thousand Natural Shocks"から始まりすぐにクラウトロック/ポストパンク的な感じで実験的なのが分かるのだが、するすると流れるなめらかな展開は非常に穏やかなポップに満ちている。#3 "Gomorrah"ではまるで自然現象かのごとくあまりにも違和感無く溶け込んでいる。アルバム全編を通してとてもユニーク。#4 "Stained Glass"や#7 "Narrow Draw"のような曲では部分的にピリッとエッジが出ているので飽きさせない。シンプルに削ぎ落とされた音はスマートでカッコいいのになんでかほっこり親しみやすい。それは#5 "Pastoral Song"でもサイケ要素も練り込みながらこんなにもギターサウンドとマッチするのかと思うフルートの音色が中和しているのか、秒針の様に控えめだが的確に反復するリズムがミニマルさを助長させるからか、絶妙な"間"も不思議な感覚になる。バンド全ての要素が衝突せず融合してこの調和の取れた雰囲気になっているのだろうと思った。
この記事で本人が言う「間違いなくクラウトロックの影響があるけどただのポップレコードでビデオゲームの様」だと形容しているが、そんなにサラッと流されてしまう物では無く人間味があって思わずじっくり聴き入ってしまうのは避けられないアルバムだった。
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 *bandcamp : Digital[released]December 23, 2014
Bruised Tongueからも出ているのですがネットから買えるのは今はデジタルのみでしょうか。2015.1.3現在※追記:カセットもリリースされたみたいです

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2015-01-01

LITTLEFOOT - NIGHT OF THE LIVING DREAMS


マサチューセッツ州ボストンの4人組、LITTLEFOOTの昨年12月にリリースされたデビューアルバム「NIGHT OF THE LIVING DREAMS」
可憐ながらもしっかりと主導していく歌声、それに輪をかける様な美しいハーモニー。#2 "maps & hands"や#5 "night of the living dreams"などではドリーミーで繊細なギターサウンドにサーフポップ的な軽やかさが加わりは心地良い事極まりない。#4 "worrydoll"ではじっくりと噛み締めるようにハーモニーがどこまでも広がる。#9 "fever dream"では全体を包み込むような安心感。#3 "bleak"では反面、哀愁がじわじわと波紋のごとく広がっていく。そんな曲調でも一貫しているのは音の響きのまろやかさ。反響によって微妙な感情の起伏がゆるやかに弧を描くように表現されている。なんの疑いも無くすっと受け入れられながらも決して単純なイメージでは無く、よく聴くとむしろその逆で様々なイメージを沸き立たせるようなある種のゆとりがある。暖かい木漏れ日の様にも思えるし月夜の様なひっそりとした雰囲気もある。語弊があるかもしれないが聴き手に負担がかからない、こっちまでなんだか優しい気持ちになって行く感じだ。そういった意味ででは影響されたもの(おそらく比較的古い物なのでは)を背景に置きながらそれを上手く消化し自分達に沿う形に発展させていて、彼女らもまた現代的なセンスを持つバンドなのかもしれないと思った。柔軟性を持ちながらも周りに流されないような存在感のあるアルバム。
bandcampからフィジカルではCDとカセットが。デジタルも購入出来る。—————————————————————————————————————————

 *bandcamp : CD/Cassette/Digital [released]December 5, 2014

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