2013-07-29

ジョセフ・アルフ・ポルカ / ジョセフ・アルフ・ポルカ (S/T)

名古屋の4人組、ジョセフ・アルフ・ポルカ(joseph alf polka)のセルフタイトルのデビューアルバム。
以前リリースしていた自主制作のCDR「空からやってきた緑の3本指」からの曲もありますが、新録されてかなりパワーアップしてくっきりと鮮明だ。#4 "フライングマンの歌"はサイケデリックなテイストに変化していてスケールの広がりがひしひしと伝わって来る感じでもあり、ヴァイオリンがゲストで加わっている#7 "ボロの靴"もキャッチーな展開にうきうきしていると急に暗雲が立ちこめる様な混沌さに巻き込まれる。
ふわっと哀愁を漂わせているヴォーカルにシンセサイザーのポップな音色は懐かしくもホッとするノスタルジックさがあり、歌詞はシンプルながらも何か心に引っかかるものがある。対するギターサウンドは自由自在。時に繊細に時に鋭さを炸裂させている。がっちり支えるベースとドラムの絶妙なバランスで曲がより深く豊かに。もちろん今回の新曲も注目で#8 "7月は夏"などではうっとりするようなハーモニーがまったりとした夏の午後を連想させて新たな一面が垣間見える。勝手な印象で言うと思わず引き込まれてしまう、彼ら独特の不思議な魅力はおそらく各メンバーが持つ色々な要素が上手く合わさって、自然に醸し出しているんだろうなと思った。だからこそ甘酸っぱいメロディーも真っすぐ素直に届くし、最後の#9 "ティーンエイジ・モンスター"の一体感と高揚感も抜群。ひとしきり盛り上がり最後は何事も無かったかの様にスッと終わる意外なあっけなさも良い。とびきりポップでドリーミー。近くにあっても今まで気づかなかった視点から見ている現実みたいな親しみやすさがあるのでは。
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THISIS(NOT)MAGAZINE  : CD[released]July 26, 2013 
<特設website>

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2013-07-24

CROSSS / Obsidian Spectre

カナダで活動するトリオ、Crosss(拠点はハリファックス、モントリオール、トロントと表記が複数あり時期によって違ったのかも)今年6月にリリースされたデビューアルバム「Obsidian Spectre」
グランジ、サイケデリックたまにメタル要素もほんのり漂い、地を這うヘビーでどっしりとしたサウンドが渦巻いていて#1 "Loki"からずるずると引き込まれます。
サウンド的にダークながらも、ヴォーカルの熱はそんなモノトーンの中にビビットな色を添える様な存在感。#2 "Smoke"の中盤からの鮮やかな流れや、特に#4 "Witching Hour"はどこかセンチメンタルとも取れるメロディもパワフルなリズムと絡み一層インパクト大。アルバムの曲のほとんど、つまりA面ではユニークな曲の展開に見られるタイトな演奏、言い換えればしたたかさと感情的かつストレートに熱を発散させている部分とが持ちつ持たれつで巧く作用している。
一方のB面は20分にも渡るエクスペリペンタルなインストの#8 "Will-o'-The-Wisp"のみという大胆な構成になっているのにはちょっと驚いた。じわりとノイジーなサウンドを重ねながら起承転結の内容で興味深い。根っこの部分は共通していてもアプローチが全く異なっている。が、それもそのはず。クレジットによるとA面とB面ではメンバーとレコーディング時期が異なります。どちらもAndy Marchを中心にA面の方はハリファックスで、(おそらく現在活動しているトリオでのレコーディング)B面は2009年にモントリオールでレコーディングされたものらしく納得。そういった意味ではこのアルバムはバンドの今までの活動遍歴が浮き彫りになっている内容なのではないだろうか。
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Telephone Explosion : 12"[released]June 11, 2013 
*bandcamp :  Digital

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#1 "Loki" 怪しげな雰囲気のビデオ。
Crosss - "Lucky Loki" 2013 from Jeremy Jansen on Vimeo.

じわじわ痺れて来る #3"Bones Brigade"
 

2013-07-21

Red Mass / Cindy Lee Split 7"

バンクーバーのMongrel Zineから今年4月にリリースされた「Red Mass / Cindy Lee Split 7"」今までZineをメインに発信し続けている様でしたが、今回初のレコードリリース。
モントリオールを拠点に活動するRed Mass。中心的なバンドメンバーに加え、オフィシャルのページを見ても分かる通りミュージシャンはもちろんアーティストやライターも数多く所属しているらしく(国籍も様々)音楽/アート集団と言った所だろうか。ちなみに今回はKing Khanも参加しており、その他メンバーもサイトに出ている。A面はそんなRed Massの曲、"Candy"が収録されておりサイケデリックど真ん中なサウンドが展開されている。感情溢れるヴォーカルや多様な楽器の音色が四方八方から飛び交い浮遊感たっぷり。万華鏡のような広がりのある雰囲気に飲まれる。
B面に収録されているのはバンクーバーのCindy Lee(元WomenとYung Mumsのメンバーを中心とするプロジェクト)の曲、"Holding The Devil's Hand"。この曲は昨年末にリリースしたデビュー作「Tatlashea」にも入っており、アルバムの中でも特にハーモニーの美しさが際立っている曲。穏やかでありながらも同時に脆さと隣合わせといった感じで、背後に潜むダークな部分がうっすらと透けて見える様な雰囲気がそのまま瞬時にパックされている。今年2月に当ブログでインタビュー(※現在は削除しています)した際に出来るだけその事に気を使っているのが伺えたが、まさに見事に実現されているのでは。
どちらの曲も音が非常に繊細で感情が豊か。ジャケットに書かれた様々な種類の悪魔がうごめいているイラストとも深くリンクしている様に思えて、視覚的にも強く印象に残る。
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Mongrel Zine : 7"vinyl[released]April 1, 2013

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アートワークは両面でこちらはRed Mass側。

2013-07-07

Mavo / Mavo 7''

モントリオールで活動するトリオ、Mavo。セルフタイトルの「Mavo 7''」がFixture Recordsから7月にリリース。2008年頃から活動し、これまで同レーベルのコンピレーションに曲が収録されていたりデジタルの音源もありましたがフィジカルでは初。リリースが待ち望まれていました。レーベルのページにも詳しく書いてある通りメンバーはVo/GのMitz Takahashi(大阪生まれの方で以前はSoy Captain、Couleesで活動。家具デザイナーでもあります)、Ba/Dr/ChoはConor Pretenderghost(Brave Radar)、さらにゲストにJackson MacIntosh(Sheer Agony)が参加しているそう。
#1 "Mock My Accent"では浮遊感が伴うサイケポップでギターのうねりが効果的に映え、#2 "Horrible Brit Pop Haircut"もメロディこそドリーミーだが芯にある力強さがひしひしと熱となって伝わってくる。最後の#3 "Totally Tired"はとびきり軽やかで同時にミニマルさも感じる。どの曲もとてもポップで丹念な印象を受けた。ひと捻りあるどこかユーモラスな雰囲気のジャングルポップ。でも全体に漂うのは昼寝で眠りにつく前のまどろみのような脱力感。それが最高に心地良い。
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Fixture Records : 7"vinyl / Digital[released]July 2, 2013

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2013-07-03

Long Weekends / Tell It To My Heart

カナダはハリファックスのトリオ、 Long Weekends。今年5月にリリースされた6曲入りの彼らのニューEP「 Tell It To My Heart 」(今のところはおそらくデジタルのみか)
今までに主にbandcampで曲を発表しており、今作は昨年の「Don't Reach Out 7"」以来のリリース。基本的な方向性は保ちつつ出すごとに印象が濃く、明確になってきている。
まず耳を奪われるのはガレージ、パンクの要素を持った破壊力抜群のヘビーなギターサウンド。さらにエモーショナルに歌い上げるヴォーカルに絡み、一層迫力を増しながら聴き手に全力で向かって来る。骨太なドラム/ベースもそれに応えるようにパワフル。と、言うとコッテコテなのかと思うだろうが流れるように少しずつ表情を変えていくメロディはむしろポップで気さくな親しみやすさがある。
後半は若干ビターな雰囲気も加わってより広がりのある展開に。#5 "Trades"は駆け抜けるスピード感がなんとも痛快。ラストでタイトル曲の#6 "Tell It To My Heart"は特にこのEPの一番の沸点と言えるだろう。熱量を失ってないのになんだか泣けて来るメロディが沁みる。哀愁がじわじわと漂う。
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*bandcamp : Digital[released]May 14, 2013

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