2014-03-31

Tense Men - Where Dull Care is Forgotten

イギリスはブライトンのレーベルFaux DiscxからリリースされたTense Menの「Where Dull Care is Forgotten」そもそもこのレーベルはCold Pumas、The Soft WallsメンバーのDan Reevesが運営している。元々のそんな縁もあってかTense MenはSauna Youth、Cold Pumas、Omi Paloneの3つのバンドメンバーからなるプロジェクト。
相性は抜群なのだろうと想像できるが、まさしく良いとこ取りな印象はそのままにそれぞれの持ち味が発揮され上手くブレンドされたようなアルバム。良さが対立せずに絶妙にマッチしている。とはいえ、白眉はなんと言っても的確なビートを繰り返すドラムとベースのミニマルさとひりひりと炸裂するギターサウンドのぶつかり合いが緊張感と熱を生み出している#2 "RNRFON"だろう。静けさから波紋のようにまろやかなで美しい広がりを見せる#4 "Where Dull Care is Forgotten"も引きつけられるし、#5 "Nonentities"のようなどっしりとした展開は単にポストバンク要素だけでは無い魅力も。ラストの#6 "Opiate Glow"はよりパンクな面が色濃く出ていてその突発的に荒ぶる中にも程よいひねり加減がユニーク。
聴いていると6曲があっという間に終わってしまうが、潔さみたいなスッキリとした印象を残す。結果的にシンプルに思えても各曲はどれもユニークで創意工夫が伝わってくる。
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Faux DiscxLP/Digital[released]March 10, 2014
 
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#2 "RNRFON"のビデオ

2014-03-23

Stevie Dinner - ~Mystery Flavor~

2013年に戻った話になるのですが、アトランタのStevie Dinner(境界線がやや曖昧だがTV Dinnerの別バンド)のアルバム「~Mystery Flavor~」
bandcampとフィジカルではMuckman RecordsからCDとカセットがリリースされていました。全体的にポップなのに聴いているうちにいつの間にかどんどん湾曲していくような雰囲気に飲み込まれます。#2 "Card Declined for Pizza & Wine"はアップテンポなメロディから序々に変化していき、フルートの音色もうすら不気味さを増長させていてなんともクセになる。 #3 "Stranger"はこもった中にゆらゆらとヴォーカル(これはどの曲でも当てはまるかも)が漂うひと際ムーディな曲。かと思えば突然思い出したように勢いを増してみたりするのでびっくりする。#6 "Black Cat"はシンプルながらもフックがあるし、曲によっては瑞々しいギターサウンドの間を時にスペーシーにうねるシンセが飛び交っているのが印象に強く残る。そんな目まぐるしさが素直に楽しい。しかしインストゥルメンタルの#13 "~Mystery Flavor~"はどこかモンドっぽくもありまた違った一面も。もやっと密室的で予測不能な展開が次々に起こる全16曲。奇抜な組み合わせをしれっとこなすセンスはなかなか。かなり面白いです。
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Muckman RecordsCD/Cassette/Digital[released]September 5, 2013
*bandcamp : Digital[released]September 10, 2013 

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2014-03-16

PyPy - Pagan Day

モントリオールから突如現れたPyPyのデビューアルバム「Pagan Day」リリースは今年の2月にSlovenly Recordingsから。
その正体はRed Mass、Duchess Says、CPC Gangbangsのメンバーからなるバンド。その組み合わせだけでも十分濃厚である事が想像出来ますが、サウンドの方もかなりエッジを効かせたパワフルかつサイケデリックなアルバム。
#1 "Pagan Day"からノイジーに攻めまくるパンクなサウンドに圧倒される。ゴリゴリと緩急を付けながら突き進む#2 "New York"も然り、紅一点のヴォーカルのエキセントリックな存在感はカリスマ的ですらあって察するにバンドの最も重要な部分なのだと思う。そしてそれを完全に網羅している他メンバーのタイトで絶対的な演奏力。どちらが欠けても成り立たない。ダイナミックなギターラインは時にメロデックに響き渡っていて表現の幅の広さが伺える。疾走感のあるパンクな曲も良いが# "Molly"では霧に包まれたような湿度の高いサウンドを展開している。#4 "Daffodils"はどこかミニマルさも感じられて彼らが勢いだけでなく混沌とした中にアートなニュアンスが意図的に散りばめられているように感じた。ラストの#7 "Ya Ya Ya / Psychedelic Overlords"も変化球。パンチが効いていて強い印象を残す。しかしサイケな雰囲気を醸し出しギリギリの危うさを抱えながら全力で駆け抜けるようなスリルは痛快。
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Slovenly RecordingsLP/CD/Digital[released]February 11, 2014

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彼らのリハーサルスペースでの#2 "New York"セッション映像。姐さんかぶってます
Entretien normal de musique ||| PyPy *NEW YORK from Entretien normal de musique on Vimeo.

2014-03-05

Each Other - Being Elastic

モントリオールを拠点に活動するトリオ、Each Other待望のデビューフルアルバム「Being Elastic」2011年からEPやシングルを出して来た彼ら。以前から独自のセンスと抜群のメロディが際立っていたがその積み重ねが開花したのだろうか、フルアルバムというこれまで以上のボリュームでも予想を見事にひっくり返してくれる自由度の高いユニークな内容となっている。
これほどに音のジャンルを断定しにくいのも珍しく(そんな事しなくても良いが)それは聴く側によって変わり偏見を持たせない。#1 "About the Crowd"のように人懐っこいポップさが常にあるのでシンプルに聴き手に響いてくる。それだけ吸収したものを自分のスタイルに落とし込む表現力に富んだバンドなのだと改めて感じる。もちろん、細かい部分でのこだわりも曲の随所にあるように思う。BradとMikeコンビの息の合ったヴォーカルのハーモニー、2本のギターの掛け合いでは(時にギターでベースラインも兼ねる)身軽でひねりの効いた柔軟なサウンドを展開させている。さらにサウンドをがっちり支えつつ、ユニークな彩りを添えているChristianの叩き出すドラムの躍動感はメロディに沿うようにフィットして明確。そして何より楽しさが伝わって来るのが良い。3人の絶妙な相互作用が最大の強みなのかもしれない。曲によって印象が大分違うがやりたい事を思う存分に詰め込んでいる充実感がある。#9 "Seeing Doubles, Dreaming Troubles"での唐突に吹っ切れて荒ぶるサウンドには潔さを感じるし、#11 "Swell Patterns"はハーモニーの盛り上がりはのびやかでエモーショナル。縦の触れ幅が大きくタイトル通りまさに屈託の無い、自在に弾むサウンド。
音以外で気になるのがアルバムアートワークや#8 "Your Ceiling Is My Floor"のビデオ。今までの小洒落た感じと異なり自らがフューチャーされている思い切ったもの。むしろこっちが自然体というか素なのかもしれないが、ちょっとだけ風変わりな人間味溢れる部分も魅力なのだろう。
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Lefse Records : CD/LP/Digital [released]March 4, 2014
(*Fat Possum Records)

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