2014-05-31

Brave Radar - Message Centre

カナダ、モントリオールのレーベルFixture Recordsを運営する2人、Conor PrendergastとTessa SmithのバンドBrave RadarのカセットEP「Message Centre」 昨年レーベルのサンプラーに新曲は収録されていましたが、バンドとしてのリリースは2009年の「A Building」以来となる待望の新作。2012年のデモに基づき制作された物らしい。
#1 "Message Centre"の流れる様に軽やかなサウンドから始まり、#2 "Out of reach"の落ち着いたヴォーカルの清々しさ。躍動感が心地よい#4 "Too long weekend"と、いった感じにどこを切っても一貫としたミニマル・ポップが顔を出す。その姿勢は芯がぶれない印象と同時に明確さも感じ取る事が出来る。#8 "Again"もそうだがシンプルなのに音の移ろいや細やかなニュアンスが聴く側の想像力を掻き立ててユニークな面もある。内面から次々に湧き出て来るような柔らかいメロディ。決して単調にならずにゆるやかに明暗をつけていく。ほっこりとした懐かしい暖かさも彼らの忘れてはならない魅力なのだろう。そんな空気感やイメージはやはり主宰するレーベルのイメージとも自然とリンクしているようで、数あるレーベルの中でも独自の存在感を的確に発信し続けているのではと思える。
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 *Fixture Records : cassette/digital [released]May 20, 2014

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ビデオもイメージと映像がいい感じにマッチしてて素敵です


2014-05-18

Cousins - The Halls of Wickwire


Cousinsはカナダ、ハリファックスのガレージロックデュオ。今月リリースされたニューアルバム「The Halls of Wickwire」どちらもヴォーカルを取り、荒ぶるダイナミックなギターとパワフルに支えるドラムの黄金比が一瞬たりともダレる事なく音となって迫る感じが圧倒的でカッコいい。なお、Cousinsというバンド名で一瞬まさかと思いますが2人は本当のいとこでは無いらしい。でもその位、お互いのセンスが非常に近いからこそ出せるであろうこの団結感。力強く始まる#1 "Phone"から序盤は畳み掛けるように駆け抜け、アルバム中盤#5 "Death Man"からどんどんその熱量を増していく。#6 "Body"のまさに体の内部から血が煮えたぎるように徐々にヒートアップしていく様は緊張感さえ漂う。アツいのだけど安定していると言うか丁寧なサウンド。そこから間髪入れずに繰り出される#7 "What's Your Name"の沸点に達した無敵感が凄い。聴いて居るこちらまでアドレナリンが出て来るかのような怒濤の盛り上がりを見せる。アルバムを聴く上で詳細な背景を必ずしも知らなくて良いかもしれないが、ジャケット裏のクレジットやこの記事を読むとこのアルバムが実の祖母に捧げられたという事が分かるし直接でなくても間接的にそういったエピソードが少なからず関連している。そう思うとこの「強さ」はなんだか揺るぎない家族愛に似ている気がする。(と、言うのはこれは勝手な解釈ですが)#9 "Ocean"の前向きで感情的なメロディがいっそう感動的に響く。
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Hand Drawn Dracula : LP/CD/digital/(casette) [released]May 13, 2014 
Badabing Records : LP 

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本人出演、ガチ感のある#6 "Body"ビデオ



2014-05-17

ジョセフ・アルフ・ポルカ - 天声人語

名古屋を拠点に活動するジョセフ・アルフ・ポルカ(joseph alf polka)のCD-R新音源「天声人語」(tenseijingo) 彼らのライブ会場と一部の店舗で入手できますが、デジタル音源はiTunesでリリース。
真っ先に某新聞のコラム名が浮かんでしまうタイトルも気になる所ではありますが、東京で彼らのライブを観る度にどんどんアクティブな印象へと変わっていてそんな最近の弾けっぷりをそのままパックしたような感じだ。昨年リリースされたs/tのデビューアルバムとはまた少し違いアグレッシヴなポップさが際立っている。もちろんまだ残っていながらも、始めの頃に持っていたどこかミステリアスで夢みごこちな感じがどんどん薄くなりつつある事に少し寂しい気もしますが、現在進行形でこちらのイメージを覆してくれるのは楽しいしリアルタイムで聴く醍醐味だと思う。そんな事を抜きにしてもポップでキャッチーな#1 "虫のしらせ"には素直に心が躍るし、#2 "かわいいねこ"はまどろみ要素をたっぷり含んだメロディーが魅力。初期音源にも収録されていた#4 "ゴーストタウン"も躍動感が増してより今のイメージにフィットしている。そして各曲の個性がよりくっきりとした輪郭を持っている感じだ。ちなみに#6 "TOKIO"は誰もが聴いた事のあるあの曲のカバー、かなりしっくりハマっています。(※iTunes音源には未収録)—————————————————————————————————————————

*ライブ会場 : CD-R
*iTunes : Digital [released]April 26, 2014 

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2014-05-11

Chad VanGaalen - Shrink Dust

カナダはカルガリーのSSW、(またはアニメーター、プロデューサーなど)Chad VanGaalenの約3年ぶり、5作目となるニューアルバム「Shrink Dust」
まず目に入るのは強烈な印象のアルバムジャケットだが(もちろん自作)そんなイメージをいい意味で覆されるような非常に穏やかで奥深い響きに満ちている。それでいて今までのキャリアに根付いた遊び心を持ったサウンド要素が散りばめられていて独特の世界観をしっかりと具現化しているのでは。#2 "Where Are You?"はアルバムの中でも特に引力が強いミステリアスな曲だ。続く#3 "Frozen Paradise"もとろけるようなメロディに全体が覆われるよう。やや自虐的要素のある#6 "Monster"もやはりどこかひねりが効いている。反面#8 "Leaning On Bells"では荒削り的なストレートな部分も見せる。しかし今回は特にヴォーカルの芯のある力強さが全体を通して暖かみが伝わって来る。曲によってライブでのサポートメンバーの参加もありそれもサウンドをより濃厚にしているのだが、まさにSSWとしての円熟した表現力を存分に発揮している。ふと自分の辿って来た道を振り返りゆったりとした時間が流れているかのよう。それは作品を出すごとに落ち着いたと言ってしまうのとは違う、ユニークかつ奇妙であり続けながらもしっかり地に足のついたどっしりとしたサウンドの豊かさが常に基本となっている。ラストの#12 "Cosmic Destroyer"もその名の通り宇宙的な壮大さにさらに広がる世界観の深さが感じ取れた。
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Sub Pop : LP/CD/Digital[released]April 29, 2014 
Flemish Eye : LP/CD/Digital 

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